2月でレーベル設立10周年を迎えたStarwave Records。時代を経るごとに所属バンドも変化。もちろん、長く所属し続けているバンドも多い。むしろ、解散という形以外でレーベルから離れるバンドがいないように、とてもバンド想いのレーベルだからこそ10周年を迎えるまでに成長し続けてきた。
同レーベルが、設立10周年を記念し、2月18日(火)に新宿BLAZEを舞台に「Starwave Fest Vol.22〜レーベル設立10周年記念イベント〜」を行なった。出演したのは、Scarlet Valse・未完成アリス・La'veil MizeriA・ラヴェーゼ・UNDER FALL JUSTICE・THE SOUND BEE HD・XANVALA・UCHUSENTAI NOIZ(ゲスト)・NightingeiL(ゲスト)・VAMPIRE ROSE(ゲスト)の10組。転換の合間には、所属バンドのヴォーカリストたちがトークを担う「Starwaveなんでやねん」コーナーも設置。ここには、所属バンドたちの当日のライブの模様をお伝えしたい。
UNDER FALL JUSTICE
トップを飾ったのが、現在のStarwave Recordsの屋台骨を支える三強バンドの一つUNDER FALL JUSTICE。イベントの幕開けを飾る楽曲としてぶつけたのが、前田愛郎の叫び声から始まった「肯定」。黒く激しく、何よりもおどろおどろしい匂いをフロア中へ振りまくように、UNDER FALL JUSTICEはどす黒い音の塊を次々放り込んできた。スクリームとメロな歌を巧みに交錯させ、フロア中の人たちを暗鬱で華激な世界へ彼らは導き入れる。
前田愛郎の痛いセリフを合図に飛びだしたのが、「君は一緒に飛び下りないかな」と歌い叫ぶ「赤い日記帳」だ。UNDER FALL JUSTICEらしい、闇や病みを抱えた心模様へ寄り添う歌を、彼らは激走する演奏に乗せぶつけだす。メンバーらと観客たちとの熱したやり取りは、バンドとファンたちとの心の結びつきを示した姿。前田愛郎の煽りに触発され、右へ左へと大きく揺れ動く観客たち。その勢いを加速させるようにUNDER FALL JUSTICEは「デスゲーム」を叩きつけた。狂気を具現化した音に触発され、観客たちが激しく頭を振り乱す。痛みを持った音を勢い良く突きつけるメンバーたち。何時しか場内は、教祖に身を任せ熱狂に嬉しく溺れる儀式のような様へと塗り上げられていた。何度も何度も繰り返される煽りの光景。そこへ身も心も預けてこそ快楽を手にしていけるのを知っているからこそ、誰もが黒い宴に身を溺れさせて逝った。
ラヴェーゼ
ラヴェーゼのライブは、紗弥-saya-の叫びを合図に轟く音をフロア中に震撼させ始まった。冒頭を飾った「Amaryllis~深淵への契約 #1」を武器に、彼らはスクリームと共に深淵から飛び出し、勢いを持って観客たちをけしかけだす。フロア中の契約者たちが、紗弥-saya-の振りへ呼応するように両手を大きく花開かせ、飛び跳ね続けてゆく。
さぁ、この勢いをさらに加速させようか。演奏は、一気に激しさと重さを増していく。紗弥-saya-の煽り声に絶叫を返せば、メンバーらの煽りにも触発された観客たちがその身を大きく揺らしながら右に左へと移動。その勢いへ重厚な音を塗り重ねるように、ラヴェーゼは「Tuberose」をぶつけた。フロア前方は、激しく頭を振り乱す人たちが支配している。広い会場という理由もあるのか、何時も以上に身体を深く折り畳む光景も印象深い。演奏が進むごとに過激さを増すラヴェーゼのライブ。激しい手拍子とヘドバンの光景をフロア中に描き出した「Silene」では、メンバーらも、観客たちも、乱れる気持ちを晒すように激しく頭を振っていた。途中には、ヘドバンや折り畳みの光景をフロア中へ作り出す煽りシーンも挿入。身体中のエナジーを振り絞り騒いでこそラヴェーゼのライブ。その様を彼らはその場へ示していった。
最期にラヴェーゼは、バンドの顔とも言える「偽りのディストピア」をぶつけてきた。荘厳で過激な闇と病みの儀式をその場へ作り上げるように、ラヴェーゼが招き入れた黒い轟音に大勢の人たちが身も心も預け、フロア中へ放たれる音の衝動を、絶望に嘆く紗弥-saya-の荒ぶる歌声を無心に貪り喰らっていた。
THE SOUND BEE HD
黒く重い音の洪水がフロア中にあふれだす。その上で、何かを求めるように響き渡るDaISUKE DARK SIDEの歌声。THE SOUND BEE HDのライブは「DEADMAN’S WALK」からスタート。物語を綴り始めるに相応しい、荘厳で壮大さを持った楽曲だ。観客たちは、彼らが導き開いた異世界へと引き込まれ、何時しかデッドマンのように身体をゆったり大きく揺さぶり、折り畳み続けていた。
現世を忘れた物語へと観客たちを連れだしたTHE SOUND BEE HDのメンバーらは、次々と新しい風景を目の前へ提示してゆく。嘆く心模様も歌声や旋律に忍ばせながら、でも、胸を昂らす勇壮さを抱いた「Walking Dead」を、彼らは朗々と、雄々しき様を持って突きつける。スペクタクルなホラー映画のエンディングのような様さえこの歌に感じるのも、楽曲自体がドラマを持っているからだ。
怒りと混沌とした感情を嘆く心の涙で洗い流すように、THE SOUND BEE HDは壮麗/荘厳なバラード「Darkness World」を、痛みに疼く感情を零すように歌い奏でだす。神々しさと美しさを抱いたDaISUKE DARK SIDEの歌声が、汚れた心の澱を洗い流してゆく。その歌声や演奏に触れている間、誰もがその場へ立ちすくみ、楽曲に心が縛りつけられていた。いや、そうしていたかったくらいに「Darkness World」が会場中の人たちの痛みを隠した心を捉えて離さなかった。闇に寄り添い救われるとは、まさにこんな感覚を言うのだろう。
最期にTHE SOUND BEE HDが示した「answer」は、心騒ぐまま熱狂に溺れろということだった。牙を剥きだした荒々しい音が、お前も本性を剥きだせよとけしかける。何時しかフロアのあちこちから天高く拳が突き上がる。騒ぐ…というよりも、沸き上がる感情を振り上げる拳に変え、解き放つ様だった。とはいえ、そこには自分を曝け出しライブを楽しむメンバーと観客たちの姿が確かにあった。
La'veil MizeriA
La'veil MizeriAのライブは,狂ったようにあざ笑う祈狂-kikyo-の声を皮切りにスタート。激しい音が次々と身体へ突き刺さる。鋭いナイフの切っ先をグサグサと肌へ刺されてゆく、そんな鈍い痛みを覚えながらも、不思議と恍惚も抱いていた。冒頭を飾った「××××」を通し、La'veil MizeriAは観客たちを逆ダイの風景へと引きずり込んでは、もっともっと狂いなさいとけしかける。凄まじいブラストビートの上で、彼らは理性を壊す教義を示していった。
演奏は、さらに痛みと激しさを伴いだす。その香りや感覚は、90年代のダーク系と呼ばれたバンドたちが持っていたのと同じだ。闇に恍惚を覚えるよう「ヘマトディプシア」が、理性をもっと壊して熱狂に溺れなさいと煽りだす。美しくも嘆く歌メロに心は妖しく惹かれながら、激しく猛る演奏に身体は熱を覚え続けていた。
La'veil MizeriAは、新たなメンバーを迎え再始動するためにと、現在もまだ活動を止めている状態だ。彼らいわく「まだ夢遊病の状態」のように、目覚めに向けて準備をしている段階。3月14日に目覚めることが決定しているが、この日は所属レーベル生誕祭のために眠りにつきながらも迷い込んできた形を取っていた。
「楽しくてハッピーで希望に満ちあふれた曲」と盛大な皮肉を込めながらLa'veil MizeriAが最期に届けたのが、絶望へ導く滅私ハードコアナンバーの「絶望郷」。すべてを闇と狂気と絶望で覆い尽くしてこそLa'veil MizeriAの世界。その醜い素顔こそが人の本性だと言わんばかりに、彼らは観客たちの中に潜む本能を、感情を壊すことで導き出そうとしていた。演奏が病む(止む)まで逆ダイし暴れまくるフロアの人たち。それこそが「あなたの本性だ」と、彼らは舞台の上であざけ笑っていたのだろうか…?!
XANVALA
始動からまだ半月足らず。XANVALAがStarwave Festに登場。ライブは、彼らの1stMV作品として発表した「鮮やかな猛毒」から幕を開けた。冒頭から巽の感情的かつ高揚した歌声が心地好くもインパクトを持って胸に突き刺さる。その歌声を追いかけるように響きだした重厚な音の洪水。混沌と麗美、二つの表情を巧みに重ね合わせ、彼らは触れた人たちを熱狂と恍惚の世界へ連れだしてゆく。心が歌に強く惹かれる。でも身体は、荒ぶる音に触発され熱狂を求めてゆく。フロアでは大勢の人たちが跳ねながら、彼らの音楽を全身で受け止めていた。XANVALAに対する期待の伝わるライブだ。その様を一緒に体感しているだけで心が熱く騒ぎだしていた。
「俺たちなりの愛し方を見せつけてやろう」、3月にシングルとして発売する「CREEPER」が飛びだした。フロア中からあふれだす熱した声・声・声。重厚な音の攻撃を受け、大勢の観客たちが全力で頭を振り乱し、沸きだす想いを舞台上へぶつけていた。その熱をXANVALAのメンバーは、美味そうな果実でも食べるように舌なめずりしながら受け止めていた。ヒリヒリとした、でも心地好く包まれていたいこの熱が、堪らなく胸を騒がせる。
「Starwaveの1ページに思いきり刻み込んでいきたい」と熱く語る巽。その言葉を受けXANVALAがぶつけたのが、「ジセイ」。激しく跳ねた演奏に身を任せた観客たちが、手にしたタオルを振りながら無邪気に跳ね続ければ、右へ左にとモッシュしだす。その様を知りながらも、熱した音を放とうと感情を剥き出しに一身にプレイし続けるメンバーたち。熱と熱…というよりは、互いに気持ちを晒しながら、ざらついた感情をぶつけあう。その関係性が、あの空間に火照る熱を作りあげていた。後半には,巽とファンたちによる掛け合いも登場していたことも伝えておこう。
「何時の日か、新宿BLAZEをパンパンにしてやる!!」。巽の宣言を受け、XANVALAは最期に「独善」を披露。轟音を放ち疾走する演奏、その上で胸を揺さぶる巽の歌に触発され、沸きだす高揚を身体が求めていた。体感的でありながら、何時だってXANVALAの音楽は魂を火照らせる。だから、短期間に大勢の信者が彼らのもとへ集いだしてるというわけか…。
未完成アリス
6月にマイナビBLITZ赤坂でのワンマン公演も控えている未完成アリスが、トリ前に出演。塁の「始めようか」の声を合図に未完成アリスが奏でたのが、「パンドラ」。彼らはこの空間へ最期に希望を残そうと、あらゆるネガティブな要素を振り払うよう熱情した歌や演奏をぶつけだした。歌メロ重視のバンドらしく、彼らの歌に合わせ観客たちが左右に身体を振りながら大きく手拍子を行なえば、勢い良く駆ける情熱的な歌や演奏に合わせヘドバンしてゆく光景がフロアには生まれていた。
「この一列目と二列目に出来る隙間が気持ち悪いんだよ、モッシュで埋めてくれますか」。塁の声を合図に始まった「所業無情大殺界」に合わせ、大勢の人たちがモッシュに興じる光景がフロアに生まれだした。皮肉を効かせた歌詞ながらも、楽曲自体がビートの速い跳ねたメロ歌チューンのように、演奏へ素直に身を任せ楽しむ人たちが多かったのも素敵な光景だ。どうせなら、このまま意識をバグらせ、暴走してしまえ!!
「君の目の前の世界は、君が自由に作れるんだよ」、塁らしい心に希望の灯をともすどころか、炎に変えるメッセージじゃないか。彼の言葉を受け飛びだした「夢世界少女」に合わせ、熱狂の渦の中へ嬉しそうに飛び込む人たちが次々登場。メンバーらに煽られ跳ねれば、時にはヘドバンをしてと、未完成アリスの作りあげるひねくれたポップワールドへ何時しか巻き込まれる人たちと、その様を傍観してゆく人たちへフロアはきっぱり分かれていた。これも、好き嫌い、熱狂と圧倒、二つの感情に振り分けられる個性を、未完成アリスの音楽が持っている証拠。「夢世界少女」の歌詞の一節ではないが、すべては「あなた次第」ということだ。
ノンストップで駆け続ける演奏。「今日、最期に一番伝えたい想いを…。応援してくれる子たちにとってどんな存在であるべきなんだろう。僕たちは希望になろうと思った。僕たちが前に向かって走っている姿を見せることが希望になると思った。僕たちの人生に無理なんて一つもない」。塁の言葉を受け、最期に未完成アリスは「良音」を届けてくれた。未完成アリスの楽曲は、どれもけっして体感的な楽曲ではない。むしろ、心で感じる音楽だ。言葉を受け止め、咀嚼してゆく良音だ。それでも騒げるのは、その想いをしっかり昇華しているから。未完成アリスの音楽と心で繋がりあったとき、その歌は心に希望を響かせてくれる。
Scarlet Valse
トリを飾ったのが、Scarlet Valse。SEが流れだすと同時にフロアから絶叫が響きだす。熱い声を胸にScarlet Valseが最初に観客たちを連れだしたのが、幸せに満ちた天国だ。開放感を抱いたギターの旋律が空まで続く階段となり、観客たちを天へと連れだした。もちろん、BGMは「Heaven」だ。この歌へ触れている間中、嬉しいドキドキが全身を包み込む。高揚を与える?!。確かにそうだ。でも、そんな短絡的な言葉では形容しきれない、ハートを熱くときめかす衝動を「Heaven」に触れるたび感じてしまうんだ。
さぁ、ここからはメンバーらと熱いバトルを繰り広げようか、Kakeruと観客たちとが熱した声をぶつけあう。互いに気持ちを高めながら、その先に生まれる熱狂や興奮を共に分かち合おうとScarlet Valseは誘いをかけてきた。飛び出したのが「Misty Night」だ。たとえ激しい曲調だろうが、荒ぶる音が轟こうと、ギターが響かせる美しい旋律に身を寄せていると心がジンと濡れてゆく。サビではKakeruと観客たちとの歌のやり取りも登場。誰もが身体中から沸きだす熱を覚えながらも、胸を揺さぶる美しい歌や旋律に心を震わせていたかった。
「自分らしくこの場所に立っていることを証明してみせる」。Kakeruの言葉に続いて披露したのが、ハードシンフォニック浪漫ナンバーの「Prayer」。Scarlet Valseの真骨頂でもある、華激な演奏と胸打つ美しいメロディが、希望を持った歌詞をブリッジに感動を持って混じり合う。麗しい声で想いを告白するように歌うKakeru。彼の想いへシンクロするように熱と美しさを持った音を次々と塗り重ねる演奏陣。フロア中の人たちが大きく振り上げた手を、想いをつかむために飛び立つ翼に変えていた気持ちもわかる気がする。
最期にScarlet Valseは、輝きをこの手につかもうと。いや、会場中に詰めかけた全員で共に輝きを放とうと「Shining…」を演奏。誰もが身体を左右に心地好く揺らしながら楽曲を、Kakeruの歌声を全身で受け止めていた。この場にいた人たちはきっと気付いていたはずだ。輝きは与えてもらうものではなく、自分が発していくものだと。その小さな輝きをみんなで交わしあったとき、それは目に見える大きな夢や希望という光になっていくことを。
セッション
「これからも音楽の力でみなさんを感動させていきたいと思います。みなさんも、これからも好きな音楽を追いかけ続けてください」。その言葉に続き、Kakeruがこの日のライブを彩った仲間たちを舞台へ呼び入れた。最期に出演者全員で、Scarlet Valseの「Rose Cruel Scar」を演奏。気心知れた仲間たちばかりのように、観客たちが笑顔で騒き、頭を振り乱すのはもちろん。舞台上のメンバーたちも、Kakeruの歌声へ歌声を重ねあえば、煽り声を上げるなど、みんなで音を無邪気に楽しんでいた。腹を割った関係の中でずっと歩み続けている仲間たちばかりだからこそ、一人一人が輝きを放ちながら舞台の上ではしゃぎ続けていれたんだ。
Starwave Recordsは、これから11年目へ向かって走り出す。これからも刺激的なバンドを次々と輩出してゆくことへ期待をしつつ、次に行われる「Starwave Fest」も楽しみに待っていようか。
TEXT:長澤智典
Starwave Records Web
http://www.starwaverecords.jp/
Starwave Records twitter
https://twitter.com/starwaverecords
―セットリスト―
UNDER FALL JUSTICE
「肯定」
「赤い日記帳」
「デスゲーム」
ラヴェーゼ
「Amaryllis~深淵への契約 #1」
「Tuberose」
「Silene」
「偽りのディストピア」
THE SOUND BEE HD
「DEADMAN’S WALK」
「Walking Dead」
「Darkness World」
「answer」
La’veil MizeriA
「××××」
「ヘマトディプシア」
「絶望郷」
XANVALA
「鮮やかな猛毒」
「CREEPER」
「ジセイ」
「独善」
未完成アリス
「パンドラ」
「所業無情大殺界」
「夢世界少女」
「良音」
Scarlet Valse
「Heaven」
「Misty Night」
「Prayer」
「Shining…」
呼び込み
「Rose Cruel Scar」