2021年度パンフレットCD第2弾作品として販売した「Euphoria」。そのEuphoriaの発売記念ライブ「Arise to Euphoria」が、11月23日(火 祝)に新宿ReNYで開催された。
O-JIROのドラムソロを合図に、舞台の幕がゆっくりと上がり始めた。千聖のいななくようなギターの音が響き渡る。その音を身に感じながらHAKUEIが厳かに歌いだした。冒頭を飾ったのは、2021年度パンフレットCD第1弾「Utopia」へ収録していた「パライゾ」だ。重々しい音と歌声が会場中へ響き渡る。雄叫びのような千聖のギターの音が刃と化し、身体へ突き刺さる。緊張感を抱いた、重厚な音が支配するライブだ。でも、その姿や演奏、何より、惑う気持ちの答えを探すように歌うHAKUEIの声に、耳が強く引き寄せられていた。
O-JIROのドラムが力強くタイトなビートを刻むのに合わせ、千聖もKING-Vを豪快に掻き鳴らし、ザクザクとした音を突きつける。「Quarter Doll」だ。闇を抱いた今宵の重厚な空気に、この曲は、さらに危険な刺激を与えてゆく。加速する演奏に触発され、気持ちがどんどん高ぶりだす。後半へ進むに従い、メンバーらが身体中から熱を発してゆくのが伝わってくる。攻撃的なPENICILLINが「Quarter Doll」を通してその刃をグッと剥きだした。
荒ぶる牙を剥きだした音に乗せ、HAKUEIが「Blood Type:S」を雄々しく歌いだす。理性の螺子を次々と外してゆくメンバーらの演奏に導かれ、HAKUEIも理性というストッパーを緩めながら、沸き立つ気持ちのままに歌い叫んでいた。いつしか気持ちが騒ぎだす。それまで会場中に渦巻いていた黒い熱が、いつの間にかギラギラとした真っ赤な熱に塗り替えられていた。
次のブロックで最初にぶつけたのが、「VOID」。地の底を這うような音から始まった楽曲は、サビで一気に走りだす。でも、「VOID」自体は終始重い衝撃を持ってせまっていた。続く「飛翔遊戯」でも、PENICILLINは重苦しい演奏をぶつけてきた。そこへ潜むマグマのような熱源を感じるたびに、気持ちが熱い刺激を受ける。闇を彷徨う感覚を覚えながらも,ずっと身体や感情が熱に浮かされていたのも、それが理由だ。
これまでの空気を変えたのが、スカ&スラッシュナンバーの「ファイブ」だ。この楽曲も重厚な音をまとっている。でも、O-JIROのビートがすさまじい勢いで走り続けるように、その演奏に触発されたメンバーたちや観客たちが感情のアクセルをグッと踏み込み、熱情した演奏に思いきり気持ちを預け、身体を揺らしていた。HAKUEIの歌声も、今までにも増して情熱的だ。身体が騒ぎだす。もっともっと熱を身体へ放り込んでくれよと言いたくなるくらいに心が火照っていた。
MCでは、千聖がライブのタイトルへ記した「Arise to Euphoria」の意味を伝えていた。O-JIROは、MC中に割れたシンバルを交換しに、一度舞台裏へ。そのシンバルを持ってきたのがO-JIROではなくHAKUEIだったところにも、このメンバーらしいお茶目さを感じた。
ここからは、最新作「Euphoria」のコーナーへ。最初に届けたのが、東京オリンピックの非公式応援ソングの「Tokyo glory」。今の時代の風景を切り取り、歌にしてゆくことの多いHAKUEIらしく、夏のオリンピックを迎えようとしていた時期に、この楽曲をHAKUEIは手がけていた。PENICILLINなりにオリンピックを盛り立てる曲として作ったこの歌は、攻撃的な姿勢を持ちながらも、気持ちを内側から熱く沸き立てるところが特徴的だ。そこもPENICILLINらしいスタイル。「Tokyo glory」に触発され、気持ちが騒ぎだす。
沸き立つ気持ちへ、眩しい輝きと、夏の太陽の日射しのような熱を降り注ぐように、PENICILLINは「Euphoria」収録曲の「still alive」を披露。メンバーらは高らかに歌い、演奏していた。それまで会場を覆っていた闇を一気に吹き飛ばすように、「still alive」が、会場中の人たちの心へ光を降り注いでいった。間奏で見せた千聖のギターも、眩しい音の光をキラキラと振りまくように鳴り響いていた。何より、この曲自体が、触れたみんなの気持ちを前へ前へと押し上げてゆくパワーを持ってる。
勢いづいた演奏へ、重く激しい衝動をぶつけるように、PENICILLINは荒ぶる音を吐き散らしながら「Too young to die!」を演奏。重いハンマーを叩きつけられたように、身体が大きく揺れ動く。見ている人たちの感情の奥の奥を、PENICILLINは刺激的な演奏や歌声で揺らし続ける。激しくも浪漫を覚えるのは、楽曲へ込めた生きざまに嬉しく刺激を受けていたからに違いない。
早くも、ライブは終盤戦へ。MCでは、「もう一つオリンピック非公式応援ソングがある」とHAKUEIが説明。飛びだしたのが、感情を熱く掻きむしる轟音ヘヴィロックナンバーの「Justice」だ。「Fate! fate!」とがなるHAKUEIの声が、「フレー!フレー!」と聞こえていたのは、耳の錯覚か?!煽る様などパンキッシュな要素も備えた楽曲のように、HAKUEIの煽り声へ千聖も煽り声を重ねながら、観客たちの身体を騒がせてゆく。
上がった気持ちを、もっともっと燃え滾らせようと、PENICILLINは「太陽」を演奏。HAKUEIは「忘れないよ 忘れないよ」と熱情した気持ちを吐き散らすように歌っていた。サビでは、フロア中の人たちが大きく両手で花を咲かせ、その手を揺らしていた。終盤に突きつけた、快感へと繋がる熱狂への道。HAKUEIの歌声が熱情に駆られるたびに、フロア中で咲いた手も、大きく華やかに揺れていた。
興奮を止められず、声を張り上げ続けるHAKUEI。その姿を煽るように、PENICILLINは最後に「快感∞フィクション」を突きつけた。パンキッシュで攻撃的な演奏が、もっともっと騒げと気持ちを掻き立てる。HAKUEIも高陽したメロディーに熱情した歌声を乗せ、「キミハキレイサ キミハステキサ」と歌いながら、快感と興奮、高陽の世界へ見ている人たちを連れていった。どんな表情で物語を描き始めようと、最後にしっかり熱情や熱狂という景色の中へ観客たちを導いてゆく。だから、彼らのライブから離れられなくなる。もっともっと、この快楽が欲しくなる!!!
アンコールは、「Euphoria」に収録しているバラードの「想創シンドローム」から演奏。美しく、でも淡い光を感じさせながら、心を晴れた景色へ連れだす楽曲だ。気持ちにジンと染み込むバラードも胸を揺さぶるが、「想創シンドローム」のような、心を輝く世界へ連れだす楽曲も欠かせない。輝きを掻き集めるように音の手を広げた千聖のギターソロも、とても優しさに満ちていた。何より、HAKUEIの歌声が,愛しい人へ思いを語りかけるように温かかった。この歌に触れている間中、ずっと包まれるような温もりを覚えていた。
暖かな温もりに抱かれて幕を閉じるのも悪くはないのはわかっている。でも、PENICILLINのライブは、気持ちを思いきり解き放ってこそ。彼らは最後に「BVB」を叩きつけ、観客たちの身体中へ熱い衝動を注ぎ込んでいった。千聖やO-JIROの「Burn Van Bang」の煽り声も、嬉しく気持ちを沸き立てる。熱狂を描きながら、配信ライブはここで終了。
何時ものように会場へ足を運んだ人たちだけに届けるサプライズとして、2回目のアンコールがスタート。飛びだしたのが「99番目の夜」。まさか最後の最後に、身体を思いきり揺らし、騒がずにいれないスリリングな熱狂高陽曲を持ってくるとは。それがあるから、PENICILLINのライブは現場で味わいたくなる。フロア中でも、誰もが少年少女の頃に戻り、この曲に熱狂していた頃の自分の気持ちで華やかに手の花を咲かせていた。千聖とO-JIROの荒ぶるセッション演奏でのエンディングも、今やお馴染みの景色になってきたようだ。むしろ、その姿を見なければライブは終えられない!!!
PHOTO:折田琢矢
TEXT:長澤智典
セットリスト
「Supernova」(SE)
「パライゾ」
「Quarter Doll」
「Blood Type:S」
「VOID」
「飛翔遊戯」
「ファイブ」
「Tokyo glory」
「still alive」
「Too young to die!」
「Justice」
「太陽」
「快感∞フィクション」
-ENCORE 1-
「想創シンドローム」
「BVB」
-ENCORE 2-
「99番目の夜」
★インフォメーション★
PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2022『The beginning of 30th anniversary』
■PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2022
『The beginning of 30th anniversary』
2月12日(土) 新宿ReNY
開場17:30/開演18:00
全席指定10,000円(税込/D別)
2月13日(日) 新宿ReNY
開場16:30/開演17:00
全席指定10,000円(税込/D別)
サポートBASS:Chiyu
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