樫原伸彦、音楽家生活40周年を記念し、9月3日(土)に赤羽ReNY alphaに主催イベント「NK40 GGWスペシャルライブ」を開催。樫原伸彦を筆頭に、彼の歩みを彩る上で、近年、縁の深いDASEIN/→Pia-no-jaC←/山川陽彩/かとう唯/森ふうか/太田彩華/令和琴姫/藤嶋美伶/SHiNが出演。当日の模様を、ここにお伝えしよう。
藤嶋美伶
イベントライブのオープニングアクトとして登場したのが、ラウドメタル系バンド囁揺的音楽集団AsMRのヴォーカル&ピアノ担当のMilliとしての顔も持つ、シンガー&ピアニストの藤嶋美伶。彼女は樫原伸彦が作曲したプログレッシブでシンフォニックなインスト曲『Risoluto(リゾルート)』を演奏。複雑で難解な展開を描きながらも、心を揺さぶる情熱的かつメロディアスな楽曲であるところに、作家、樫原伸彦の冴えたセンスを覚えた。様々な表情を見せる楽曲を、藤嶋美伶は熱情した演奏を通してドラマ化。観客たちを驚かせつつも、心を釘付けにした。
司会を担ったのが、樫原伸彦が楽曲提供やサウンドプロデュースを担う山川陽彩。この日の主役、樫原伸彦もトークに参加。この日のライブは、樫原伸彦が作詞/作曲/編曲/プロデュースのいずれかを担った楽曲のみを出演者たちがパフォーマンスする形で行われた。
→Pia-no-jaC←
イベントの幕開けを飾ったのが、→Pia-no-jaC←。ピアノとカホンというユニット編成にも関わらず、触れた瞬間から、彼らは観客たちの衆目を一気に集め、自身のパーティー感満載な世界へみんなを連れ出した。2人は、有名なベートーベンの『第九』をダンスミュージックにアレンジし、披露。観客巻き込み型のユニットらしく、カホンのHIROが声を上げて煽れば、ピアノのHAYATOが鍵盤を叩きながら凄まじい速度で音符を踊らせる。五線譜の上で暴れ騒ぐ2人の演奏に刺激を受け、フロアのあちこちに身体を揺らす人たちが登場。続く『METROPOLIS』でも、2人はその魅力を遺憾なく発揮した。
後半には、樫原伸彦もキーボートで参加。まずは、3人で『PEACE』を披露。跳ねた音を奏でるHAYATOの演奏へ、歌う鍵盤奏者らしい華やかでメロディアスな色を樫原伸彦が加え、楽曲をドラマチックに彩った。最後にセッション披露した『JACK』では、HAYATOと樫原伸彦による、ピアノを縦に置いて指を走らせたトリッキーな奏法も登場。樫原伸彦がオルガンを軸にしたホンキートンクな演奏を繰り広げ、そこへ2人が熱く寄り添う形でフロア中の人たちを熱狂させた。まさに、短い中にも見せ場を濃縮したライブだった。
DASEIN
DASEINとはデビューの頃からの付き合い。彼らが提唱する"HYPER BEAT ROCK"というエレクトロ+ロックな音楽性を、メンバーと一緒に作りあげたのが樫原伸彦だった。
この日のライブは、耳に心地好く響く歌謡メロも印象深い、雄大な景観を描くミドルメロウの『流離人』からスタート。『天下無双』ではフロア中を羽根扇子や手扇子舞うディスコ空間に塗り替えれば、活動初期の名曲『まぶしくて』とコロナ禍以降の時期に作りあげた『待宵影』を並べ、いかにしてHYPER BEAT ROCKが時代へ寄り添いながら変化し続けてきたのかを目の前に映し出していった。
後半は、ピアノ演奏に樫原伸彦を迎え、共に歩み続けた22年の歳月を確かめあうように最新曲の『歩 -ayumi-』を披露。DASEINが、樫原伸彦とどんな音楽の歩みを重ねてきたのかを、異なる5つの表情を通して伝えてきた。
樫原伸彦+→Pia-no-jaC←+DASEIN
ユニットセクションの最後は、樫原伸彦+→Pia-no-jaC←+DASEINという豪華な組み合わせでセッション。先に→Pia-no-jaC←の『台風』を演奏。4つの楽器の音が、美しく清らかな音色と濁った衝動音を交錯しながら熱情した音のうねりを作り上げる。2台の鍵盤と2つの打楽器にヴォイスという普通ならあり得ない組み合わせにより生まれたのは、瞬発力の強い台風のような爆裂した演奏。各人がフリーフォームで紡いだ音へ、他のメンバーらが情熱的な音の装飾を重ねれば、DASEINのデビュー曲『夢つれづれ』もさりげなく歌として組み込み、5人は、熱情したドラマを描きだしていった。
続くDASEINの『555』で3組は、エレクトロな同期音を削り、樫原伸彦の年齢となる59歳を題材に「5 5 5 GO ON!」ならぬ「5 5 5 59」と叫びながら、ロックンロールなセッションプレイを見せてゆく。この曲では、カホンとドラムによる演奏の掛け合いも登場。その瞬間瞬間に音の魔法を振りかけながら、卓越したプレイヤーたちが交わし合うからこその熱いバトルなセッションを作り上げていった。
ここからは、ポップスフィールドで活動しているアイドル/アーティストたちを迎えたセクションへ。
令和琴姫
樫原伸彦は、平成琴姫時代に楽曲をプロデュース(令和になり、名前を令和琴姫に変更) 。彼女たちは、大正琴を改良した平成琴(今は令和琴?)を弾きながら、歌謡メロも印象深い『涙の革命』。心地好く跳ねた演奏も魅力的、甘さと青春と恋心を混ぜ合わせたポップチューンの『ちょこれぃと!』の2曲を披露。メロウ/ポップという異なる二つの美味しいスイーツのような楽曲を並べ、アイドルという枠を超えた胸に響く良質な歌を、艶やか/明るく軽やかな音色と二つの装いを持って届けてくれた。
SHiN
樫原伸彦が担う制作会社officeGGWに所属、作曲家のSHiNが登場。樫原伸彦が作詞をし、キセキレイが歌い、オリコンチャート入りした『君と僕のブロッサム』を、作曲を手がけたSHiNがアコギの弾き語りで歌唱。女性シンガーが歌った曲を、裸の状態に近い姿で作曲家みずから歌ったことで、楽曲の原型となる姿を味わえたのが嬉しかった。歌い手の個性という華やかさを原曲にまとわせる形で、楽曲は新たな色を魅せてゆく。その芽吹くための幹となる姿を耳にしたことで、どんな風に曲が一つの色を持った花を咲かせたのか、聴き比べたい欲求が生まれていた。
太田彩華
太田家/囁揺的音楽集団AsMRのメンバーとしても活動している、声優/シンガーの太田彩華。先に、樫原伸彦が作曲をしたソロ曲『全員カンパイParty Night』を披露。弾む曲調に心をくすぐられたのか、太田彩華は軽やかにステップを踏みながら、キュンと心を刺激する愛らしい声を響かせていた。さらに彼女は、「美少女戦士セーラームーンR」のテーマ曲『愛の戦士』をカバー。甘いパフュームを振りまく大人の美少女戦士になり、少し大人びた香りも振りまきながら、ドレッシーな姿に似合うしとやかな声で歌っていた。
山川陽彩
イベントの司会も、担当。最近、樫原伸彦が力を入れてプロデュースしているNEO歌謡シンガーの山川陽彩の登場だ。過去には、韓流シンガーのパク・ジョンミン(元SS501)もカバー。同楽曲を手がけた作家陣から曲を受け継ぐ使命を託された山川陽彩は、樫原伸彦が編曲を手がけ、壮大な弦楽曲として新たな命を宿した『愛をください』を、低音の効いた奥深い歌声で熱唱。曲に込めた思いと歌い手の感情の波長が重なり合った瞬間、そこには人の心を揺さぶるドラマが生まれていた。続く、樫原伸彦が曲を手がけ、ピアノ演奏で参加した『あの夏の約束』も、そう。語り部となった山川陽彩の歌声を通し、心揺さぶる思い出の風景を、記憶の中のスクリーンへ色鮮やかに映し出す。ピアノと歌というシンプルな編成であり、樫原伸彦の奏でる温かな音色が歌声へ寄り添うように音の手を差し伸べるからこそ、心揺れ動くままに歌う山川陽彩の声へじっと耳を傾けていたかった。
最後に、山川陽彩と樫原伸彦が「機動武闘伝Gガンダム」のエンディングテーマ『君の中の永遠』をデュエット。心地好く跳ねたソウルフルな楽曲の上で、2人とも低音を生かした太い声を響かせ、男の浪漫を漂わせた奥深い燻銀なソウルミュージックを届けてくれた。
アイドルのプロデューサーとしても活躍中、スーパーポジティブアイドルの森ふうか。彼女は、樫原伸彦が手がけた「しましまとらのしまじろう」のエンディングテーマ『ハッピー・ジャムジャム』が大好きすぎて、みずからカバーして歌い続けている。樫原伸彦との縁も、『ハッピー・ジャムジャム』が好きすぎるあまり楽曲の制作を依頼。そこで繋がった関係であることを、樫原伸彦と一緒にライブ前のトークで語っていた。
彼女の性格をそのまま投影。森ふうかは、樫原伸彦が手がけたスーパーポジティブパワーナンバーの『ようこそ! ポジティブワールド!!!』を満面の笑みを浮かべて歌いながら、キラキラした輝きをフロア中に降り注いでいった。さらに、オリジナルアレンジを編曲家に発注して制作した大好きな『ハッピー・ジャムジャム 森ふうかver.』を歌い、会場にいる人たちを童心に変え、この空間をキラキラな笑顔に満ちたワンダーランドに染め上げていった。
かとう唯
平成琴姫のメンバーだった頃から、その才能に注目。ミュージカル女優/ソロシンガーとして活動を始めて以降も、積極的に活動をバックアップし続けているかとう唯が登場。
ライブでは、彼女が在籍していた時代に提供した平成琴姫の『乙女革命』を、樫原伸彦のエレピ+オケ演奏スタイルで歌唱。とても華のあるアーティストだ。彼女が躍動した楽曲へ身を預けるように歌いだしたとたん、この空間がパッと華やいだ。観客たちの視線や心をグイグイ引き寄せるかとう唯の力強いパフォーマンスに刺激を受け、フロアにいる人たちも身体を揺らし、手を高く掲げだす。
続く、かとう唯の最新ナンバー『東京プリンセスストーリー』は、長大なミュージカルを数分強に濃縮した楽曲。かとう唯は、五線譜の上で華麗に舞い踊る樫原伸彦のエレピの演奏をパートナーに、ヒロインを演じるように歌い踊り、時に語りながら、何度も挫折を繰り返しながらも夢を追いかけ続け、輝き(プリンセス)を手にするまでの、心踊る物語を描きだしていった。
MCでは、ダジャレントとして活動しているかとう唯の駄洒落がポンポン飛び交っていたこともお伝えしておこう。
樫原伸彦セッション
最後のブロックは、樫原伸彦が手がけた曲たちを、この日出演したアーティストたちとセッション。まずは、アニメ「勇者特急マイトガイン」のオープニングテーマ『嵐の勇者(ヒーロー)』を、樫原伸彦+かとう唯+森ふうか、3人の歌い手が熱唱。妖しい大人の魅力を振りまき歌う、かとう唯。今にも弾けそうな勢いを歌声にぶつける、森ふうか。樫原伸彦は、燻銀の渋い歌声で、楽曲に奥行きを与えてゆく。ハートを突き刺す高音を生かした女性陣のパワフルな歌声と、2人の歌声に翼を授ける樫原伸彦の低音を生かした重厚なハーモニーが、気持ちを熱く奮わせた。
樫原伸彦のエレピの演奏に乗せてDASEINのRickyが歌ったのが、樫原伸彦が編曲とプロデュースを手がけた尾崎豊の『街路樹』。樫原伸彦の奏でる穏やかで美しいピアノの音色の上で、語り部となったRickyは、心を震わせるように歌声を響かせ、モノクロの景色の中へ淡く切ない色を塗り重ねていった。
この日の出演者たちに加え、officeGGWへ所属するシンガーたちがステージの上へ集合。樫原伸彦の59歳の誕生日をみんなで祝えば、樫原伸彦はプレゼントされた寅柄のベストを、その場で身につけた。その格好の樫原伸彦を中心に、メンバー全員で最後に歌ったのが、樫原伸彦の代表曲『ハッピー・ジャムジャム』。出演者みんなでハピジャムの振り付けで踊り、軽やかにステップを踏みながら、この会場を笑顔あふれるパラダイスに染め上げてゆく。フロア中の人たちも心の中で「ジャムジャム」と声を上げ、最高にHAPPYな空間を出演者らと一緒に作りあげていった。
音楽家生活40周年という一つの節目の中、最高のパートナーたちと描いた幸せに満ちたひとときだった。出演者らが「次は50周年で」と語っていたように、また10年後に。いや、その前に還暦祝いも含め、素敵な仲間たちとのパーティーを、また催していただきたい。
PHOTO:かでぃ
TEXT:長澤智典
樫原伸彦 SNS
https://twitter.com/nobuchang
https://officeggw.net/creator/%e6%a8%ab%e5%8e%9f%e4%bc%b8%e5%bd%a6/
9/10(土)までアーカイブ配信中!
https://www.funity.jp/tickets/muetike/show/NK40GGWst/1/1
セットリスト
藤嶋美伶
『Risoluto』(リゾルート)
→Pia-no-jaC←
『第九』
『METROPOLIS』
『PEACE』(樫原伸彦・→Pia-no-jaC←)
『JACK』(樫原伸彦・→Pia-no-jaC←)
DASEIN
『流離人』
『天下無双』
『まぶしくて』
『待宵影』
『歩 -ayumi-』DASEIN+樫原伸彦
樫原伸彦+→Pia-no-jaC←+DASEIN
『台風』
『555』
令和琴姫
『涙の革命』
『ちょこれぃと!』
SHiN
『君と僕のブロッサム』
太田彩華
『全員カンパイParty Night』
『愛の戦士』
山川陽彩
『愛をください』
『あの夏の約束』樫原伸彦+山川陽彩
『君の中の永遠』樫原伸彦+山川陽彩
森ふうか
『ようこそ! ポジティブワールド!!!』
『ハッピー・ジャムジャム 森ふうかver.』
かとう唯
『乙女革命』樫原伸彦+かとう唯
『東京プリンセスストーリー』樫原伸彦+かとう唯
樫原伸彦ナンバーセッション
『嵐の勇者(ヒーロー)』樫原伸彦+かとう唯+森ふうか
『街路樹』樫原伸彦+Ricky
『ハッピージャムジャム』,ALL CASTS