ヴィジュアルシーンの中、それぞれにソロアーティストとして活動をしているDavidのSUI、GE+IMの直祈、MEMEのL。3人が、9月より埼玉・名古屋・静岡・東京を舞台にした「無料3MAN TOUR」を行うことを発表した。なぜ彼らが手を組み、ソロシーンの台頭を促す新たなムーブメントを作りあげようとしたのか、その思いや意図を3人に伺った。
バンド以上に徹底して世界観へこだわりを持って表現していけるところが、ソロアーティフトとして活動してゆく最大の強み。
――ヴィジュアル系シーンの中、それぞれがソロアーティストとして自身の世界観を深く探求し続けています。その3人が、なぜ一緒にアクションを起こそうとしたのかとても気になります。
SUI きっかけは、俺と直祈さんがプライベートで食事に行ったとき、直祈さんに「形にしたいヴィジョンがあるんだ」と話を持ちかけられたのがきっかけでしたよね。
直祈 そうですね。当初は、「独自の世界観を持っている強いバンドやソロプロジェクト等で集まって新たなムーブメントを起こしたい、そのきっかけとなるようなイベントをやりたい」という思いを、有志の方々に打ち明けていったんです。そうした中でSUIさんと話を煮詰めてゆく中、お互いがソロで活動をしていることから、「ソロだからこそ出来ることをやろう」という話へ発展して、Lさんにもそのことを伝えたことで熱が高まり、このプロジェクトへと発展していきました。
SUI ソロアーティストと一口に言っても、様々な活動スタイルがあります。ライブ活動に於いてはパーマネントなメンバーを決めて活動をするパターンもあれば、楽曲制作一つを取っても、作家さんにお願いをし、その曲たちを表現しているアーティストもいます。今回集まった3人は、みずから作詞・作曲・編曲を担い、明確なコンセプトや意志を持って活動をしている、いわゆるプロデューサーとしての気質や美学を持っている。つまり、それぞれが自身の描きたい世界観を責任持って表現したい力に長けていると思うんです。しかも3人とも、「ソロとして、どういう風に進んでいきたいのか」や「このシーンの中でのソロとしての位置をどう確立したいか」のヴィジョンへ共通項を覚えたし、お互いに活動へのシンパシーを感じていたことから「一緒に面白いことを仕掛けよう」と手を組んだ形でした。同時に、各々が掲げ持つソロとしての存在理由や意義を世の中へ明確に打ち出すことで個々の認知を上げ、ヴィジュアル系というシーンの中、ソロアーティストとしての活躍の場をさらに広げたい思いもありました。
直祈 最初は僕とSUIさんの思いから話は進んでいきましたが、Lさん含めた3人で企画を形にしていくことで、やりたいことがより明確になっていったと思います。
L 2人とは、同じようなシンパシーを感じる間柄だからね。
――3人とも、以前からの繋がりを持っていた関係だったのでしょうか?
SUI DavidとMEMEは、一緒に2マンライブをやるくらいの仲。それ以前に3人とも、前身バンド時代に対バンしあっていた関係。バンド活動を経てソロアーティストになったという共通の経緯がある。それも、3人を結びつける大きなきっかけでしたね。
――3人とも、なぜソロアーティストというスタイルを選んだのかも気になります。
直祈 僕の場合、『長く続けていく』という目的だけがソロを始めるきっかけでした。バンドって本当に魅力的だし爆発力があって今も憧れます。ただ、メンバーが突然脱退してしまう可能性もあったりして、どのような事情にせよファンを悲しませてしまうし、ステージに立って音楽活動したくてもバンドを組むのは中々積極的にはなれなかった。ソロの場合はすべて自分次第。もちろん責任は大きくなりますが、自分が終わりを決めなければ終わりません。ただ、始める前は「自分は絶対にソロは向いてない」と思っていました。やり始めてからは独自のやり方で成長できていく実感があって楽しくて、自分に向いてるのかもしれないと思い始めたんですよね。人生何が起こるかわからないです。
L 俺も、そこは一緒ですけど。自分の場合、活動してゆく中で、いきなりメンバーが飛んでしまうなど、終わり方が曖昧というか、不可抗力な形で活動が消滅してしまうことも多かった。そんな理由で活動を終えてしまっては、真剣に応援してくれているファンたちに申し訳ねぇよなとなるじゃないですか。それに、一緒に長く手を取り合えるメンバーって、頑張って見つけるものではなく、活動してゆく中で出会うもの。その思いもあることから、一緒に長く手を組みたいメンバーが見つかれば一緒にやればいいという思いを持ってソロ活動へと踏み出したわけだし、応援してくれる人たちがいる以上は、1曲でも多くみんなの胸に歌を残していきたい。だから、俺は今の形を取りました。
それに、ソロのほうが活動をしてゆくうえで余計な悩みがないというか、本当に表現したい楽曲制作や活動に集中していける。人が多ければ多いほどプラスの面もあるけど、いろんな問題も発生してゆく。でも一人なら、悩み葛藤する面も含め、すべては自己責任として受け止められる。とてもシンプルな気持ちでいられることこそが、自分には合っているんだろうなと思って。
SUI 3人とも、そこは共通して持っている想いですからね。俺も、全ての責任を担う形で自分にハードルを設けたかったんです。10年ほど休まずにバンドのフロントマンとしてメンバー、ファンの皆さん、事務所の方々のおかげで色んな経験をさせていただきましたが、その活動は主にメンバーと一緒に創り上げて成り立っていたものであり、バンドが一段落してさらにヴォーカリストとしての成長を考えた時、今までにないアクションや挑戦方法を選択していきたかった。それがソロを始めようと思うキッカケに繋がりました。もともと運営に関してや楽曲制作等、自分がリードしたり構築することはずっとしてきたので、特に違和感のない形でスッと入っていけたというか。
――でもヴィジュアルシーンの場合、いまだソロアーティストよりもバンドを応援したがる傾向が強いですよね。
直祈 たしかにそういった傾向はあるのかもしれません。ソロプロジェクトという活動のスタンスを否定はされなくても、なかなか活動を深く認知してもらうには難しい現状があるのも事実です。だからこそ、今回の動きに繋がっていったんだと思います。
ソロだからこそ描ける自由でより濃密な世界を知ってもらえたら、もっと楽しんでもらえると思うんですよね。徹底して世界観を追究して表現していけるところが、ソロの最大の強みだと思いますね。
――みなさん、こだわりは人一倍強い人たちですもんね。
L 確かに2人はこだわりの強い表現者たちだけど、俺はそこまでこだわりはないというか。むしろ、ぜんぜん適当ですよ(笑)。ただ、こうやって2人に声をかけてもらえたことや、MEMEの描く世界観を支持してくれる人たちがいるのは、無意識の中でこだわりを見せているからかも知れない。それ以前に、表現したい欲求やこだわりを強く持っていなかったら、一人で表現衒活動などしていないと思うからね。
直祈 確かに。
L 正直、物事をいろいろと進めてゆくうえでは、バンドのほうが分業もできて楽ですよ。活動のすべてを背負う面での大変さはソロのほうが多いけど、それでも「やりてぇ!!」というか、こうやってライブ活動を続けているのも、背負ってでも表現してゆく意識が途轍もなく大きいからなのは間違いないからね。
SUI それぞれに"こだわりが強い"ぶん、他にはない世界観を各々が作りあげている。だからこそ、そのこだわりぶりを、みんなへ一気に見せてあげたい。それが、今回、3アーティストでツアーをまわろうと決めた一番の理由なんですよ。
――それぞれ、今の音楽性についても聞かせてください。
直祈 僕は古き良きヴィジュアル系が好きなんですが、そういった基盤に新しい要素や発想をミックスさせて、さらにラウドなバンドサウンドを軸に表現しています。肉厚なバンドサウンドが合うというか、好きなんですよね。GE+IMをわかりやすく伝えるならば「医療系」なんですけど、表面だけでなく楽曲面でも"医療系"を彷彿させるような音作りやアレンジを大切にしています。新たな"医療系"として独自のスタイルを確立させていきたいですね。
L 医療系というスタイルは、直樹さんのキャラクターにもすげぇ合ってるなと思う。
SUI 直祈さんは、自分のポリシーを明確に持って活動をしている人。音楽面でも、サイバーな曲調の中へ、高いヴォーカリゼーションを絡めて表現していて、計算され尽くした音楽性という印象。俺の中では、まさに"仕事人"という印象ですね。MEMEも…Lさんは、とても表現の自由度の高いヴォーカリスト。なおかつ、ロックな精神も強く持っている。直祈さんとは異なる形で、Lさんも「ヴォーカリストとはこうあるべきだろう」という姿勢を示してくれる人だから、俺はそこに共感を覚えています。
直祈 Lさんは楽曲から自身の歌声や個性をめちゃめちゃ生かしている印象を強く受けています。Lさん自身は「何も考えてない」とよく口にしているけど、自分らしさへのこだわりぶりは相当なもの。自分らしくないことは絶対にやらないというか。逆に、受け入れられるものならLさんの色に出来てしまう方だと思います。
L 俺自身、ライブ中に余計なことを考えたくない性格だからこそ、100%自分の色で塗り固めようと自分らしさを出して表現していくんだろうね。もちろん、計算もするけど。それ以上に、「感覚」に導かれるまま表現していく面は強い。とにかく俺は、純粋に「音楽を楽しみたい」。人を楽しませることもそうだけど、一番は、自分が楽しい音楽を表現し続けていたい。その気持ちでやっていることなので。
対して、SUIさんのやっているDavidは、俺とは違って"すげぇこだわりを持って表現"している。音楽性のみならず、音楽を通して描き出す世界観そのものに強いこだわりを持っている方。その徹底ぶりには、つねに良い刺激をもらっています。
直祈 SUIさんはストーリー性を大切に表現していて、僕以上にあらゆる面でこだわっているのを感じます。だからこそ、側にいていろんな刺激をもらえるんですよね。加えて、ヴォーカリストとしてアーティストとして挑戦してゆく姿勢にもいつも良い刺激をもらっています。SUIさんの活動を見ていると、自分も「もっと頑張らないと」となります。
SUI でも、お互いに影響を受けあうのは当たり前といいますか。それぞれに"こだわりが強い"ぶん、他にはない世界観を各々が作りあげている。だからこそ、そのこだわりぶりを、みんなへ一気に見せてあげたい。それが、今回、3アーティストでツアーをまわろうと決めた一番の理由なんですよ。
いわゆるバンドの中にソロも混じってではなく、全員がソロアーティストというイベントの形を取ることで、個々の活動を知ってもちえるだけではなく、ソロアーティストたちが一堂に会して音楽を発信することでシーン全体への刺激はもちろん。新しいムーブメントとしての光を降り注いでいける。だからこそ、共に手を取り合おうとなったわけだし、今回の動きが、新しい動きの幕開けになればなという気持ちもありましたからね。
L 正直、バンド系のイベントに負ける気なんかぜんぜんしねぇ。むしろ、バンド好きな人たちこそが夢中になれるライブが、ここに生まれるなと思ってる。
SUI そして、この動きを通してソロアーティストがさらに増えていくキッカケにもなればいいなとも思っています。
――過去にも、ソロアーティストだけが集まったヴィジュアル系のイベントって無かったような気がします。それくらい画期的なことですよね。
SUI 自分たちがソロアーティストとして活動をしている理由の一つが、 「他ではやってないことをやりたい」という意識。同じ意識をもった3人が集まることで、僕ら自身も、ここから何が生まれるのかとても興味深いですからね。
――今回のツアーは無料で開催。そこも太っ腹じゃないですか。
SUI いわゆる優先チケットも有料で発券しますが、基本は全公演無料です。それも、大元は直祈さんのアイデアからそう決めました。
直祈 無料公演をワンマンではなくイベントとしてやりたかったのは、過去に自分自身が"個性的なバンドが集結した無料イベント"を見て衝撃を受けて、ヴィジュアル系にのめり込んだ経験が強烈に残っているからなんですね。あの時のような熱を、個性的なアーティストが集まって伝えられたら最高だなと思って。当時の僕のように興味本位で来たとしてもハードル低くその刺激を味わえて心底楽しめるかもしれない。だから無料イベントという形にこだわりました。そして今回は無料ツアーというところが肝になっていて、SUIさんの出身地の埼玉、Lさんの出身地の名古屋、僕の出身地の静岡と、それぞれの出身地をまわっていくことになってます。そしてファイナルは僕らが憧れた東京です。
SUI さらに、詳細はこれからになりますが、せっかく3アーティストで4ヶ所のツアーを行うことから、3アーティストの音源を集めたオムニバス盤も販売します。こちらの詳細も楽しみにしていてほしいですね。
L 俺、単純にこの3人で各地をまわれることが嬉しいし、楽しみなんですよ。この企画、もっと早い時期にやろうと思えば出来たことかも知れない。だけど、今、 この時期に開催するのにこそ意味があるなと強く感じてる。その理由も、ぜひ、それぞれの会場に足を運んで感じたうえで、確かめてほしい。
――今回の一連の動きが、ヴィジュアル系シーンの中に於けるソロアーティストたちの活動の活性化や、改めて注目を集めるきっかけになりそうですからね。
L 間違いなくそうなります。正直、バンド系のイベントに負ける気なんかぜんぜんしねぇ。むしろ、バンド好きな人たちこそが夢中になれるライブが、ここに生まれるなと思ってる。
ソロアーティストとして確立している人たちが一堂に会することで、楽しみながらも、より互いを補いあえる。そこで生まれる何かに自分らちも期待しているし、個性的なソロアーティストたちの競演を通して、このシーンにもソロアーティストとして活動してゆく人たちが増えるきっかけになれたらなとも思っています。
直祈 僕らの行動をきっかけに、僕らにとってもシーンにとっても何かが覚醒して盛り上がっていけたら本望です。
SUI ソロだからこそ描き出せる世界観やエンターテイメント性を知ってもらえたら…。もともと3人とも、ヴィジュアル系の王道なスタイルを追求し続けてバンドのフロントマンを努めてきた人たち。ヴィジュアル系が大好きなんです。今はこのシーンから離れてしまった人たちでも、琴線に触れるであろう音楽性を3アーティストともに示しているからこそ、今回の無料公演をきっかけに初めて、そして改めてヴィジュアルシーンに触れるきっかけにしてほしいです。もちろん、今のヴィジュアルシーンに強く惹かれている人たちにも、新たな刺激を得るきっかけの場になってほしいなと強く願っています。もちろん僕らは、今回の動きを単発で終わらせるつもりはなく、不定期ながらもシリーズ化していきたいという意思をもっています。その試金石となるツアーだからこそ、まずは多くの人たちにソロアーティストが作り上げる音楽性の魅力を感じてもらいたいんですよ。それこそ、GE+IMが提唱する「新しい医療系のスタイル」とかね。
直祈 そうですね。そういったこと含めて、出来れば最初から最後までイベントを楽しんでもらいたいですね。まだ僕らを知らない方も是非この機会に足を運んでください。
SUI たとえイベントだろうと、Davidだからこそ描き出せる舞台のようなステージをワンマンと遜色なく見せてゆくので、そのコンセプチュアルな世界観や非日常を思いきり堪能してもらいたいなと思っています。3アーティストともに良い意味での現実逃避ができると思いますし、例え孤独でもこの人たちが作る世界があるなら頑張ろうって思ってもらえたら本望です。
L まぁ、MEMEに関しては好き勝手にやっていくだけなんだけどね(笑)。でも、音楽ってそういうものじゃない。3アーティストとも、みんな自由に音楽を表現している人たち。その中にも三者三様あることを感じてほしいし、そこを楽しんでもらいたいからね。しかも、せっかくこの3人が競演することもあるから…。
SUI ぜひ、イベント最後まで見てください。毎回、最後には3人によっての何かしらが…そこは、会場に来て確かめてください。みなさまのご来場を、お待ちしております。
TEXT:長澤智典
★インフォメーション★
DAVID/GE+IM/MEME Triangle Tour 2023 "VISUAL SOLO SUMMIT"
2023年9月2日(土) 浦和Narciss
2023年9月15日(金) 名古屋HOLIDAY NEXT
2023年9月16日(土) 静岡Sunash
-Tour Final-
2023年9月26日(火) 渋谷REX
[開場/開演]17:00/17:30
[優先チケット]3,000(D代別)
[一般チケット]無料(D代別)
※チケットなしでも入場可能
但し、無料枠が規定人数に達した場合はご入場いただけない事がございます。
予めご了承ください。
[出演]
DAVID/GE+IM/MEME
※ 各日程ラストにコラボセッション有
※ 終演後撮影会あり
※ Triangle CD「ソード・メス・チェーンソー」会場限定販売あり
[入場順]
優先チケット→無料チケット(フライヤー及び紙チケット)→チケット等なし
[優先チケット]
livepocketにて8/5(土)10:00~ 一斉発売
~各公演前日12:00まで
※予定枚数がなくなり次第、終了となります。
9/2 優先チケット購入URL
https://t.livepocket.jp/e/a7vf9
9/15 優先チケット購入URL
https://t.livepocket.jp/e/x1k_t
9/16 優先チケット購入URL
https://t.livepocket.jp/e/rwf37
9/26 優先チケット購入URL
https://t.livepocket.jp/e/s-9la
[無料チケット]
7/15(土)以降、3アーティストが直接配布、及びインディーズ取扱店、LIVE会場にて順次設置。
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