先にDyfis(ディファイス)のプロフィールを紹介しよう。Dyfisの誕生の種は2017年に遡る。バンドの中心人物となるDeris(Vo)とRaychel(Dr)が出会い、意気投合。そこへ、卓越したテクニックを誇るGeorge(G)とMASANORI(B)を誘い、2018年よりバンドとして始動すべくDyfisを立ち上げた。
資料によると、Dyfisが標榜しているのが「ストーリーテラー(物語の語り手)を基にした"STORITELLER ROCK(ストリテラー・ロック)"」。その音については後述しよう。「Dyfisの魅力は、Derisの3オクターブを越える中性的な歌声」。その僅かな手がかりを元に、10月27日(土)に新宿club SCIENCEで行われたDyfis始動主催 3MAN LIVE「Accelerate evolution」に足を運んだ。
この日は、Dyfisを筆頭にASURAとオモイメグラスが出演。オープニングアクトにmaymeが登場すれば、転換の幕間には浜田ブリトニーが登壇し、出演者たちとトークを繰り広げていた。場内には、AIM.が懐かしさ覚えるまろやかで美味しいキーマカレーを提供する飲食ブースを出店すれば、M&K Designが先鋭的かつ使い心地の良いARTな品々を展示。まるでフェスティバル会場のような雰囲気のもと、イベントは幕を開けた。
ラウンジポップを標榜しながらも気持ちどころか身体も熱を持って揺らす、オープニングアクトを飾ったmayme。胎内と感情を優しく揺らし意識を蕩けさせる、エレクトロなマインドメルティングミュージックを届けるオモイメグラス。まさに美しい衝動、華激な魂の音を突き付け観客たちを熱狂に叩き落としたASURAに続き、トリを飾り登場したのが、この日のイベントの主催バンドDyfis。
Derisの歌声は、地の底で蠢く心にさえ光を与えていた。
冒頭からGeorgeによるタッピングプレイ冴え渡るヒステリカルでスピーディなギターリフが炸裂。RaychelとMASANORIが描き出した荒々しいジャングルビートの上で、Derisが雄々しく歌声をはべらせる。Dyfisのライブの幕開けを飾った『Material』が、観客たちの感情をいきなり釘付けにした。激しく攻める演奏の上で、沸き立つ感情をグッと溜め込み、朗々と歌うDeris。その声に心が惹きつけられる。攻めた演奏とは裏腹に、抑揚を持った歌声で感情のドラマを描きだすDerisの姿を、満員の観客たちは身体に熱を覚えながらもじっと見つめていた。
演奏は、時を止めることなく『LONGING FOR LIGHT』へ。眩い音色をまぶしながら、演奏は熱を持って駆けだした。爆発しそうな感情を解き放つように、Derisは高音域を活かした声で熱唱。雄叫びを上げるギターの旋律。タイトな音を響かせ疾走する演奏とは裏腹に、揺れる心模様を歌声に乗せシアトリカルに描き出すDeris。巧みに転調をしながら創り上げる躍動のドラマは、とても魅力的だ。
その音は、破壊的な衝動を持って一気に爆発した。勇壮な同期音に絡み合う、重厚で過激な演奏。ラウドでインダストリアルな香りを放つ音の上で、揺れ動く感情のままDerisは『StrangE WorlD』を歌いあげる。その楽曲は、ラウドやメタルという枠で括るには狭すぎる規格外な表情を持っていた。深遠さを抱いたDyfisの音楽が、胸の奥底に眠っていた重く深い闇の感情を抉りだす。でもDerisの歌声は、地の底で蠢く心にさえ光を与えていた。
世界が変わり、新しい音の旅が始まる。
手にした本を読みながら語るDeris。そして最後に彼女はこう告げた、「世界が変わり、新しい音の旅が始まる」と…。
ズクズクと胸を刺すギターの音へ絡みあう、光を携えた開放的な演奏。遠くに見える眩しい輝きへ手を伸ばすように、Derisは『CHANGE the FUTURE』を歌いだした。光を携えた調べを通し、壮大な景観を描き出す演奏陣。最初のブロックで見せた重厚で過激な表情とは異なり、Dyfisは『CHANGE the FUTURE』を通し、その先にある希望という光を僕らの心に射してゆく。嘆きや苦悩を背負いながら、それでも未来を示す道へ共に進もうとDyfisは呼びかける。Derisは「塗り替えてゆけ この手で」と、希望をつかむその手を僕らにも差し伸べてきた。もちろん会場にいる誰もがその歌声へ心の手を伸ばし、固く握手を交わしあっていた。
未来へ突き進む希望に満ちた想いを後押しするように、Dyfisは胸をキュッと優しく疼かせるメロディアスでハートフルな『Autumn Wind』を届けてくれた。何処か懐かしさや親しみを覚える歌という理由もあるのか、その優しさにずっと寄り添っていたかった。「出会いの意味を見つける、あなたと歩んだ日々」。その言葉が胸に響いたとたん、僕ら自身が、その日々を「秋の風揺れる」この日から始めたい気持ちに染まっていた。そんな切なくもロマンチックな心にDyfisの歌が染めてくれた。
心地好い緊張感を持って流れた『Brand New Day』が、胸に溜め込んだ気持ちを少しずつ溶かしてゆく。抑揚を抑えた演奏だからこそ、Derisの揺れ動く感情的な歌声が際立つ魅力を放つ。うずくまった気持ちを解き放ち、ここから新しい世界を描こうと宣言するように歌うDeris。このブロックでDyfisは、未来へ向かう強い意志を、3つの異なる物語を通し、ドラマチックに示してくれた。
始まりの出会いに、熱い声援と祝福を送ろうじゃない。
「静かな日々に宿る強い光、胸の奥に眠る強い想い。世界を駆け抜ける想いを持った歌を届けます」
飛び出したのが、『BRAVES』だ。熱を抱き躍動する楽曲の上で、Derisは「それがみずからの定めだ」と言い聞かせるように、立ち向かう意志を力強く歌いかける。力強く握りしめた拳を突き出すように、沸き立つ気持ちを歌声に乗せ、Derisは想いをぶつけてゆく。「この定めを抱きしめていた」と歌うその声を通しみずからを奮い立たせ、誓いを立てるDeris。そして…。
最後にDyfisは、『Adolescence Love』を演奏。ここまでに描いてきた闇や光が交錯する物語をすべて愛しき愛情で包み込むように、Derisは優しい笑みまじりで『Adolescence Love』を歌いかけた。気持ちを熱く揺らす演奏に触発され身体を揺らしながらも、誰もがDerisの届ける想いをしっかり胸の内で受け止めていた。「胸を揺らすこの高鳴り」を感じながら、Dyfisの指し示した愛しき想いを優しくハグしていたかった。落ちサビに感じた温かい心模様。何よりその歌は、愛に満ちていた。「胸を揺らしているこの高鳴りは翼になる」。そう、Dyfisの歌は触れた人たちの心の翼になる。いや、そうしていきたい想いを持ってDyfisは歌い奏でてゆく。その最初の宣言を、僕らはこの会場で受け取っていた。
「ふたたび逢えることを願って、再会の約束の歌を」。Dyfisがアンコールに描いたのが、熱を持った光を思いきり解き放つ、サビ歌始まりの『PROMISE』だ。触れた瞬間から気持ちをグッとつかむ、輝きを持った歌と演奏だ。『PROMISE』が人と人とを心で繋ぎ、確かな絆として結び合わせてゆく。『PROMISE』は、様々な人たちと心を繋げあう歌になるに違いない。フロアーから突き上がった拳が、また繋がりあおうと交わす約束にも見えていた。この出会いを未来へ繋ごうとDerisは歌いかける。一緒に明日へ向かって飛び立とうと、Dyfisは嬉しい誘いをかけてきた。その想いを受け止めながら、まずは始まりの出会いに、熱い声援と祝福を送ろうじゃないか。
Dyfisの描く物語は、まだまだ最初の1ページ目へ、第一章のエピソードを綴り始めたに過ぎない。これからDyfisが、どんな物語を。いや、物語を成す出来事を記してゆくのかに期待したい。そして、一緒にこの物語を育て続けたい。
PHOTO: EISUKE
TEXT:長澤智典
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浜田ブリトニー twitter
https://twitter.com/bri_ha
AIM. twitter
https://twitter.com/GEL_daydreamer_
M&K Design Web
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─セットリスト─
『Material』
『LONGING FOR LIGHT』
『StrangE WorlD』
『CHANGE the FUTURE』
『Autumn Wind』
『Brand New Day』
『BRAVES』
『Adolescence Love』
-ENCORE-
『PROMISE』